恋愛小説「シンギュラリティ」⑧

   

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恋愛小説「シンギュラリティ」①
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「たまにはさ、買い物するとかさ」
ドライブはもう飽きた、と告げると、東京で一番大きなショッピングモールへと連れてこられた。
たしかに仕事が忙しくて、自分の服なんぞに気を使う暇もなかった。

「わたし老けて見えない?」
ショーウィンドウに映る自分を見て、わたしはハッとした。
黒っぽいものばかりきているし、シルエットが若くなかった。
「一応29なんだけどな」
「だからちょっと買い物が必要かなと思って」

ピンクのスカート。
「わたしね、こんな商売してると、生身の人間を触れ合うことが減るの」
「うん」
モスグリーンのベレー帽。
「いつも自分がプログラムしたアンドロイドといるから、予想外のことがないの」
「うん」
白くてさっぱりしたブラウス。
「でもあなたは少し違うのね」
「そう?」
全部、買ったそばから着て帰った。わたしは気分がすっかりティーンの女の子のようになっていた。

紙袋を全て水沼に持たせてモールを歩いていたら、水沼が何かを指差す。そこには靴屋さんのショーウィンドウに光る、コーラルのエナメルの靴があった。
「わあ…」
わたしは子供のように歓声を上げてしまった。
水沼はわたしの手を握って、店内へ急ぎ足で入ると、コーラルの靴を手に取る。
「サイズあるかしら」
わたしがそういうのよりはやく、水沼がわたしの右足の靴を奪う。水沼の手はいつも暖かい。
そのまま彼にされるがまま、コーラルの靴を穿かされる。
周りをそっと見ると、水沼の容姿が目立つからか注目の的だ。

そうか…わたしは普段、こういうものを書いているんだな…忘れていたな。

「ぴったりじゃない?」
水沼が(自分が作ったわけでもないのに)誇らしげに言う。
わたしはおかしくなって、つい元気に頷いてしまった。

「ありがとう、連れてきてくれて」
ちょっと色々忘れてたわ、わたし。
帰りの車の中で、素直にそう言ってお礼を言うと、水沼が満足げに笑う。
「それなら良かった、新しいシナリオもきっと売れるよ」

家までつくと、わたしは手のひらを静脈認証の上にかざす。
玄関のドアが開いた時だった。
だれかがそこに立っていた。
「?!」
思わず水沼がわたしの腕を後ろに引く。わたしはびっくりして水沼にしがみついた。
ドアが半開きになって、外の月明かりで中の人影が照らされる。
「……竹部…?」
わたしは人影の顔を確認すると、竹部の元へと走った。
「竹部どうしたの?!」
「京子さん…」

つづく
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