恋愛小説「シンギュラリティ」①

      2018/09/09

「京子先生、第2章最高でした!もう何度もなんども自分のアンドロイドにリインストールして楽しんじゃいました」
「やっぱり皐月京子先生のお話が一番です
他とは一線を画すような繊細さ、本当に大ファンです」
カフェモカの甘みが舌にじっと残る。
竹部はわたしがため息をついたのを見逃さなかった。
見逃さないようにとわたしが「教育」した結果だが。

シンギュラリティ

「お疲れですか」
「いいから続けて、もういくらもないでしょ」
竹部は少し黙ってから、わかりましたといって読者から寄せられた感想の続きを読み始める。
わたしは目を閉じてソファに深く腰掛けて、竹部のすこし低い声に耳を傾ける。すこし鼻炎気味に設定したのはわたしだ。
「以上です、あ、いまメールが」
竹部はハッとしたように、いま頭に届いたメールを読み上げる。
「お世話様です」
お世話様です、株式会社オッドハウス、下総でございます。
かねがねお話ししておりました、新型アンドロイド BCー28735が完成となりました。
つきましては皐月先生に是非使用していただければと考えております。
「わかったって、なんか適当に返事しておいて」
竹部の声を遮って、わたしは言った。
「かしこまりました」
竹部は少しの間目を閉じると、メールに返信をした。

「次のアンドロイドの到着までお休みになっては」
わたしがカフェモカの続きを飲もうとするのを、長い指が取り上げる。
「ちょっと…」
不満げな声をあげると
「カフェインが規定値を超えています」
そうだった。
いま竹部には新作のシナリオをインプットしているんだった。
世の中ではイケメンのアンドロイドに、作家が作ったラブストーリーをインプットして体験するのが流行っている。
新作では女性に安眠を約束するような、リラクゼーション効果も搭載してほしいとデベロッパから言われている。
だから竹部はわたしのカフェインなんか気にしたのだ。
「わかったわよ…」

「代わりにカモミールティーを」
そのまま竹部がキッチンに行こうとするので、わたしは止める。
「いいわよ」
いいわよ、もとから喉が乾いてて飲んでたんじゃないわ。
竹部は不思議そうな顔をする。
「どういう意味でしょうか、インプットが足りません」
その整った顔がすこしの当惑に綺麗につつまれる。
「わたしにもわかんない」
ため息をついて目を閉じると大きく伸びをする。
目を開けると、竹部の顔がすぐ目の前にあってわたしはどきっとした。
そうだった、こんなことも「仕込んだ」っけ。
「ちょっとお疲れですね」
竹部はわたしの額に自分の額をつけると、酸素濃度が低いです、といった。
サンソノウド、まるでお菓子の名前かのように発音されたそれにわたしは苦笑する。

「眠れるまで何か読みましょうか、AI関連の書籍はその聡明な頭には飽きましたか」
竹部が楽しそうに言いながらわたしをお姫様抱きするので、抵抗せずそのまま従う。
このままベッドに押し込まれたら眠ってしまいそうだ。サンソノウドが低いとは本当なんだろう。
無論、疑ってないが。

「新しいアンドロイドいつ届くって?」
「明後日には」

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