エッセイ 新婚旅行の朝

      2018/06/30

そんな風にして、わたしは多くの国のホテルで迎える朝を経験してきた。

エッセイ 新婚旅行の朝





しらじらとしてきた空に、オレンジの東京タワーが見える。
夜の終わりと、新しい朝の訪れを告げている。
ここは都内のホテル。
ホテルの早朝は、本当に気持ちがいい。

それはこのホテルに限ったことではない。

バリ島のいきつけのホテルの朝は、中庭やビーチの前、プールサイドを散策するのが楽しい。
夜の間に降った雨つゆがビーチベッドに溜まるから、係りの人がひっくり返して回るのだ。
あたたかな気温で乾いたビーチベッドの端に腰掛けて、朝日を眺める。
最高だ。

ベルギーの古いホテルの朝は、まだまだ薄暗い。
アールヌーボー調の街並みが、ひっそりとしている。
たまにやってくるトロリーバスもガラガラで、人気がない。
それを窓ガラス越しに眺めてから、買っておいたブラウンのパンを食べる。
ベルギーのホテルには朝食がプランに付いていないことがよくあるからだ。

台湾の朝は早い。
朝ごはん専用の食堂があって、おまんじゅうみたいな肉まんとかを売っている。
バイク通勤の人たちがひっきりなしにやってきて、買っていく。
わたしだけなんの予定もないから、だらだら食べることもできるし、ホテルに逃げ帰ることもできる。
アジアの活気を早くも感じる。

そんな風にして、わたしは多くの国のホテルで迎える朝を経験してきた。
独りで。
別に寂しくはないし、独りじゃないと感じられないこともあったと思う。

でも今は、と横を見る。
キングサイズベッドから伸びる白い腕と、整った顔。
夫だ。

いまのわたしは、ホテルの朝を独りで迎えてはいないんだなと、新鮮な気持ちになる。
夫をじっと見てみる。
彼はまだ夢のなかのようだ。

起きてきたらコーヒーでも入れてあげよう。
そんな相手ができたことに、感謝をしながら。

 
 
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