恋愛小説 シンギュラリティ⑥

   

1話から読むにはこちら↓
恋愛小説「シンギュラリティ」①
ーーーーーー

「どこへ行きたい?」
水沼が片手でハンドルを握って、もう片手をわたしの助手席の背もたれに預けながら聞く。
「あなたに任せるわ、わたしいまあなたを観察してるの」
わたしが澄ましてそういうと、水沼は小さく笑った。よく笑うアンドロイドだ。
「そう、じゃあこのまま埠頭まで抜けようかな」
水沼がハンドルをきると、わたしの体が遠心力でゆれるのがわかる。

「いつもこんな感じなの」
水沼が連れて行ってくれた埠頭は少し古くて、訪れるカップルもそう多くないところだった。東京のベイエリアにあるそこは、それでいて、圧巻の景色を有していた。
「いつもって?」
水沼は車を止めて降りると、わたしの方の戸を開けてくれながら続けた。
「新作のアンドロイドを試す時、今みたいにカンサツ?したりするの」
わたしの手がぐっと引かれる。
車のエスコートは最初から搭載されているらしい。わたしは頭の中でメモした。

「しないわ、シナリオぶち込んで、不具合がないかチェックしてすぐ返すわよ」
わたしはぶっきらぼうにそう言って立ち上がった。
あはは、と水沼が可笑しそうに笑う。
「俺には一応ぶち込んだんだよね?」
「そうだけど…」
そうだけど、まだまだはじめの方しか書けてないシナリオだから。最近調子悪いのよ。
わたしはちょっと言い訳がましく口ごもった。まだまだ書けてないからとはいえ、新型アンドロイドを観察しようなんて初めてのことだ。

「ほらじゃあ、シナリオ作らなきゃセンセ!」
水沼が楽しそうに言うので、わたしは思わずうっとおしげな顔をつくる。でも頭ではいくつかのアイディアが浮かびつつあった。

ちょっとレトロな車でわざわざ地上を走る彼氏か…いいかもしれない。
今までのシナリオは最先端を行くデートコースばかりだったから、意外にも新鮮かも?
わたしは頭で考えた。

「ほらはやく俺を使ってなんなりと」
水沼がおどけてかしこまった姿勢になるので、わたしはその横をすり抜ける。
「いーらない」
「えー、どうして」
わたしはしらないあいだに自分が笑っていることに気がついた。先の展開が浮かんだからかもしれない。

このままもう少し観察しておこう。新しいアイディアがでるかもしれない。

つづく
ーーーーーー
よかったら感想をください!
ブログに小説を掲載するのは初めてのことなので、よかったらみなさんの感想をいただきたいです!
問い合わせからでもいいし、Twitter(@cocoinen)からでもお待ちしています!

もし、匿名がよかったらPeingからもお待ちしています!

 - 未分類