シンギュラリティ④「恋人の『試作品』」

      2018/10/16

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恋愛小説「シンギュラリティ」①
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わたしは驚いたし憤慨した。
「そんなこと言えって言った覚えないわ」
タブレットをまた操作しようとすると、その手を水沼が掴むので驚いた。
「きゃっ、ちょっと何!」

「どうしました?」
その声を聞きつけて、竹部が戻って来てしまった。
わたしはその姿にどきっとせずにはいられなかった。善良な竹部。
なんでもないの、そう言ってわたしは水沼の手を振り払う。

「…そうですか?」
竹部はしばらく不思議そうに私達を見ていたが、3秒してまるでいままでのことを忘れたかのように笑顔に戻った。
「では」
竹部は再びその場を後にする。

「なんなのよ、急に掴まなくたって、減点だわ」
わたしは再びタブレットに視線を落とす。
「だっていまのはさ、インプットじゃないから」
タブレットを見ているわたしと視線が合うように腰を落とした水沼は笑う。
「どう言うことよ」
わたしは間抜けな声を出さずにはいられなかった。
でも言われて見たらそりゃそうだ。
人の恋愛感情を読むなんて、わたしがシナリオに入れたわけじゃない。

「…待って、もしかして下総さんが俺のこと書いたメール読んでないの?」
水沼があきれた声を出す。
なんのことだかわからないので、素直に頷くしかない。
「嘘でしょ?」
水沼が手のひらを差し出す。
わたしは恐る恐るその手を握ると、骨伝導で下総さんの声が聞こえてくる。この直接脳に語りかけてくる感じ、わたしは骨伝導が大嫌いだ。

水沼を借りていられるのは3週間。その間に試し切れるかわからないほど、水沼は高性能にできているそうだ。

「…」

「わかった? 俺には考える力が今までの型以上にあるの」
竹部が適当に選んだと言うパーカーに身を包んだ水沼は得意げに言う。
わたしは下総さんの説明と合わせてその話を信じざるを得なかった。
「…わ、わかったけど突然腕を掴むのは…ちょっと!」
いっている側から、水沼はわたしの手を握って作業場をぬけ、エントランスの方へ向かおうとする。
わたしは足がもつれそうになるのを抑えて、タブレットを掴んでいるのでやっとだった。

「タブレット操作できない!はなして」
廊下でわたしが叫ぶと(これだから試作品は嫌だ)
「車で操作したらいいじゃない」
水沼が嬉しそうに言う。
車?
試作品のくせにライセンスを持っていると言うの?
わたしの考えを見透かしたのか、水沼は手のひらに運転の認可番号を出してみせる。
「俺、オプションで車が最初からついてるんだ、外に届いてるはずだよ」
わたしは盛大にため息をついた。
「これ」を使って作品を仕上げないといけないのか。いくらシナリオ作家といっても、下総さんが作った地の性格までは変えられないだろう。

水沼の言う通りだ。
竹部にはやく会いたい。

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