恋愛小説「シンギュラリティ③」

      2018/09/15

水沼の電源を竹部が手早くオフにする。
オッドハウスのアンドロイドにはいつも緊急停止用のボタンが首の後ろについている。
それとは別に本人に言えば電源は切れるのだが、万一のために作動するか確認しておく必要がある。

わたしもパソコンにむかう。
暗澹たる気持ちだ。
これからわたしのやることは、水沼に開発中の新作をインプットして…竹部の電源を切ることだ。

わたしの作品は必ず、女性一人に対してアンドロイド一人で楽しむものだ。
デベロッパからそう言う要請が来ているのもあるし、わたしとしてもその方が書きやすかった。
「準備…いい?」
出来るだけ何事でもないように声を出す。
「はい、水沼のコード接続完了しました」
背中の方で聞こえる竹部の声。
わたしは素早くパソコンを操作した。
まさか思いとどまらないように。

インプット作業が30分程度で完了すると、竹部が手際よく水沼からコードを抜いて電源を入れる。
わたしはその様子をいつものソファから見ていた。

しばらくして、水沼が目を開けた。
「京子さん…おはようございます」
「ワイヤレスに切り替えて」
わたしは手元のタブレットと水沼をワイヤレスで接続すると、竹部にうなづいた。

「ですますはダメ」
わたしは素早くタブレットを操作し、水沼の頭を書き換える。
「わかった」
水沼がニカッと微笑む。
こんな笑い方をするのか、とすこし驚いたのを悟られたくなかった。

「では、僕はこれで」
竹部がそう言うと、わたしはどきっとした。
「待って竹部」
踵を返そうとする竹部に声をかける。
「その…元気で、まってて」
わたしはとんまなことを言う。アンドロイドである彼に元気もへったくれもないのに。
竹部はすこし笑うと、頷いた。
「いつでも元気ですけどね」
なんてことはない。数週間水沼を使ったら、丁重にお返しすればいいだけだ。

そういうと竹部は倉庫のほうへ向かった。倉庫に行って自分で電源を切るのだ。
わたしはそれを見ていられなかったので、水沼の方を向き直る。
すると水沼はすこし背をかがめてわたしの顔を見ていた。

「なによ」
「ねえ、京子さん、竹部さんいなくて悲しいって思ったでしょ」

つづく
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