エッセイ 今夜は冷えるね、の話

      2018/07/01

今夜は冷えるね。
と、夫がいうと、わたしは幸せな気持ちになる。
 

今夜は冷えるね、の話



 
べつに、冷えるね、でも、暑いね、でも気持ちいいね、でもなんでもいいのだ。
ああ、この人と生活しているんだなという気持ちになる。
他人と挨拶のようにかわす、今日はひえますね、とは違う、きのうもきょうも、そしてあすも時間を共にするもの同士の「冷えるね」は格別に幸せだ。

夫と出会ったのが去年の夏だから、やっと季節をひとめぐりしたことになる。
彼はいつもワイシャツに黒のパンツで、何も変わらない。
わたしは季節に応じて、色とりどりの服を着てきた。
お互いの四季をみて、互いにますます惚れた気がする。
その間も、ずっと、今夜は暑いね、冷えるね、と言い合ってきたのだ。
夫は痩せ、わたしは太った。

今日という日は二度とこない。
だから、その今日の気温や天気、湿度を共にできる人がいることを考えると感動で胸が少しきゅっとなる。
いままでわたしには本当の意味でそうやって二度とこない今日を送り届ける相手がいなかったからだ。

いままでの恋人を思い出しても、今夜は冷えるねとはあまり連絡しあったりしなかった。
彼らはデートという外出の用事の中だけの生き物で、わたしのプライベートな夜には関係しなかったように思う。
というか、わたしが関係させてこなかった。

ところで今夜は暑いようだ。
昼間の気温がぐっと上がるとかで、夫が「覚悟しなきゃね」と言っていた。
もうじき梅雨があけたら熱帯夜の時期がはじまる。

それをまた、今夜は暑いねと、夫に言いたい。
 
 
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